2015.08.17

富士山の魅力(息づく信仰の歴史)

富士山日記第34号(執筆者 環境省 富士五湖自然保護官事務所 房村)

富士山は世界遺産ですが、何遺産かご存じでしょうか?
富士山の美しさからよく自然遺産だという方がいらっしゃいますが、実は「文化」遺産なのです。
世界文化遺産として以下の2つの理由で世界に認められました。
●評価基準ⅲ「富士山信仰」という山岳に対する固有の文化的伝統を表す証拠
●評価基準ⅵ 顕著な普遍的意義を持つ芸術作品との直接的・有形的な関連性

基準ⅵは、富士山を描いた絵が国内外にあるので皆さんおわかりかと思います。
基準ⅲは、富士山の信仰が今もなお残っていると言うことですが、富士山を巡視する中でその証拠を見ることがあります。このような証拠を見ながら登ることは、富士山の魅力の一つではないかと思います。

証拠①「マネキ」

富士山信仰は江戸時代に最盛期になり、富士講と呼ばれる富士山信仰をするグループが登りました。そのグループでは登った証拠として「マネキ」と呼ばれる所属する富士講名を記したものを山小屋などに献納しました。

吉田口7合目トモエ館内のマネキ

また、吉田口(山梨県側)の山小屋では、山小屋ミュージアムという富士山の歴史を解説したポスターを全山小屋に設置しています。ポスターを見れば、マネキを持ってきた富士講など富士山は昔から信仰の山であったことが分かり富士登山が何倍にも楽しめます。

吉田口の富士山ミュージアムポスター

証拠②「富士講の方々」

富士山は山ガール・山ボーイだけが登る山ではありません。
先ほどから話題にしている「富士講」の方々が今もいて登っていらっしゃいます。
江戸時代の富士講のスタイルは、白装束やわらじ・足袋、金剛杖、だったそうです。お写真撮らせていただいた富士講の方々のスタイルもまさにそのとおり!今でも伝統が息づいていることを実感できます。とてもかっこいいです!
でも、富士山は夏でも雪が降り氷点下になる時もあります。この服装で山頂で御来光を拝むのは本当に修行だっただろうなと思います。

富士講「十七夜講社」の方々(7月26日6合目にて)

 

富士山は、今も昔も多くの人を惹きつけます。きっと圧倒的な自然の美しさ・厳しさが、信仰の対象としてそして、現在の登山する方々を惹きつけているのだと思います。

御来光(山頂から)