2019.07.30

富士山の植物(須走ルート編)

富士山日記第76号 執筆者 環境省 沼津管理官事務所 山田優子

やっと梅雨が明けましたね。いよいよ夏本番です。
今回は、富士山の植物を登山ルート別に紹介したいと思います。まずは須走ルート編です。
富士山はどんなイメージですか?
以前、富士山のルールについて書いた時に少し触れましたが、五合目から七合目くらいまでルートによってばらつきはありますが、皆さんが思っている以上に高山植物が生息しています。
富士山は標高が高く気温が低いので、平地では見頃の過ぎた植物もこれから見頃を迎えたりします。
今年は梅雨が長かったこともあり、山小屋さんの話では高山植物の開花が遅れているそうです。
梅雨が明け、これからたくさんの高山植物が次々と咲き始め登山道を華やかにしてくれることでしょう。

日本一の山「富士山」ですから、どのルートも登頂に多くの時間を要します。
その登山の疲れを一瞬でも癒やしてくれる高山植物を紹介したいと思いますので、これから登山を計画している方は、お目当ての高山植物を決めて探してみたり、ルートによって見られる植物が違うので、ルート決めの参考にするのもいいかもしれません。

~須走ルート~

須走ルートは標高1,970mから登りはじめ、本八合目で吉田ルートと合流します。
五合目から六合目付近まで樹林帯の中を緩やかに登り、八合目から岩場になります。
富士宮ルートに比べて距離も基準登山時間も長いですが、少しずつ標高を上げていけるので、高所順応しやすいと思います。
五合目のスタートから樹林帯の中を登りますので、緑が多く他のルートとは一味違う楽しみ方が出来るルートです。

ベニバナイチヤクソウ

【ベニバナイチヤクソウ】
山地帯から亜高山帯の明るいところに群生し、茎は赤みを帯び蛇行して曲がっています。花は淡いピンク色で下向きに咲きます。開花時期は6月~8月上旬頃。
須走ルート五合目から六合目付近で見ることが出来ます。一面に広がって咲いている場所があるので、見つけやすいと思います。小さくて可愛らしい花で登山道の脇にあるので近くで観察してみて下さい。

ツマトリソウ

【ツマトリソウ】
亜高山帯の草地に生える多年草で、葉は茎の上部に5枚以上輪生状につき細い楕円形で先端が尖っています。花は白く上向きに咲きます。開花時期は6月~7月。
須走ルート五合目から六合目の間で見ることが出来ます。白い花を1つ咲かせるだけなので見つけにくいかもしれませんが、とても美しい花なのでぜひ見つけてみて下さい。花びらは7枚ですが、時々8枚の花があるようなので花びらを数えてみるのも楽しいですよ。

クルマユリ

【クルマユリ】
ダケカンバ林や草原に生える多年草で、花は赤橙色で花びらの内側に濃い赤褐色の斑点があり斜め下向きに咲きます。開花時期は7月~8月。葉が放射状についている姿を車輪にたとえて「クルマユリ」と名付けられたそうです。
須走ルート六合目から本六合目の間で見ることが出来ます。7月15日の巡視の際はまだ蕾で、7月24日には開花していました。つぼみは目立ちませんが咲き始めると鮮やかな赤橙色で存在感がありますので見つけやすいと思います。

シロバナノヘビイチゴ

【シロバナノヘビイチゴ】
山地帯から亜高山帯の林縁に生息します。つる性の茎を地面に伸ばして生えるので一面に白い花を咲かせます。葉は三枚ではっきりとした葉脈が見えます。実は食べることが出来ます。開花時期は5月~8月で長い間楽しむことが出来ます。
須走ルート五合目から本六合目付近でよく見られます。登山道で一番多く見られる花です。一面がシロバナノヘビイチゴの花畑になっている所がいくつもあるので、小さな白い花を見て疲れを癒やして下さい。

イワヒゲ

【イワヒゲ】
標高2,800~3,000m付近の風当たりが強い溶岩の割れ目を這うように密生する小型の低木です。高山の特殊な環境に生える植物群で、鱗片状の葉で下に向かって伸びます。花は鐘形のすずらんのような白い花で下向きに咲きます。開花時期は7月頃。
須走ルート七合目から本七合目の間で見ることが出来ますので、岩の間を探してみて下さい。岩を這って伸びる姿には生命力を感じます。

ハクサンシャクナゲ

【ハクサンシャクナゲ】
高さ1~3mの常緑低木で、枝先に白色から紅色を帯びた花を咲かせ、花びらの内側に淡緑の斑点があります。
須走ルート五合目から七合目の間で見ることが出来ます。須走口六合目山小屋付近に多く生息していて、開花時期は7月~8月。今年は花芽が少ないようですが、7月15日の巡視中に花芽のついた木も見られました。