富士山で見られるいきものたち
富士山日記第101号(執筆者 山梨県富士山レンジャー 半田尚人)
富士山五合目以上に暮らす昆虫・鳥・動物
夏、富士山で暮らすいきものたちが最も輝く季節。コロナ禍で昨年は富士山閉山、今年は感染防止対策を徹底した上での慎重な開山となりました。そんな中でも、いきものたちは生き生きと、そして逞しく暮らしていました。今回は私たち富士山レンジャーが、昨年と今年の夏に富士山五合目以上で出逢ったいきものたちを振り返ってご紹介しましょう。
イワヒバリ(Alpine Accentor)
富士山の隠れたアイドル。人間をあまり恐れず、美しい鳴き声で登山者を癒してくれるので、登山中に見掛けた人もいるかも知れません。でもあくまでも野生の鳥、そっとしてあげましょう。
アサギマダラ(Chestnut Tiger)
美しいだけでなく、遠く沖縄・台湾まで渡りをするタフな蝶です。さらに今年は富士山頂でもアサギマダラが飛んでいる姿を目撃しました。この小さな体のどこにそんな力があるのか不思議です。
ルリビタキ(Red-flanked Bluetail)
「ルリビタキダヨ♪」とも聞こえる美声でさえずる青い鳥。互いにさえずって愛を囁き合っているのかと思いきや、この声で鳴いているのは全てオスです。メスのルリビタキの気を惹こうと、必死に恋のバトル中なのです。
バッタの仲間(Grasshopper)
8月後半になると御中道などの砂礫帯でよくバッタを見掛けます。草などの食べ物が少ないこんな所になぜ彼らはいるのでしょう? 麓の激しい生存競争を避けるため? 気候が合っている? 考えてみると面白いですね。
ホシガラス(Spotted Nutcracker)
高山でよく見掛けるホシガラス。彼らをはじめ、夏に高山にいた動物たちは冬はどうしているのでしょう? 冬にはホシガラスは青木ヶ原樹海などで目撃されています。麓の森を守ることは彼らの冬の棲み処を守ることにも繋がっているのですね。
マルハナバチ(Bumblebee)
受粉を助けてくれる虫の少ない高山に咲く植物にとって、高地でも活動するマルハナバチはとても大切な存在です。ヤハズヒゴタイなどの花を、次々と巡って花粉を運ぶ働き者です。
ニホンジカ(Sika Deer)
昨年、五合目ロータリーの崖に姿を現したニホンジカが、イタドリの葉やタカネバラの花などを食べていました。とても愛らしい姿ですが、一方で高山植物が心配です。シカの食害はとても難しい問題です。
いかがでしたか。ここにご紹介したのはほんの一部で、他にもたくさんのいきものたちが、富士山の高山・亜高山帯の過酷な環境の中で、頑張って生きています。読者の皆さんに、少しでも富士山の自然を感じ、この自然環境を守る意識を持っていただくことが、富士山レンジャーの願いです。