2024.10.02

この夏、富士山で出逢ったいろいろ

富士山日記第125号(執筆者 環境省 沼津管理官事務所 アクティブレンジャー 山田優子)

気がつけばもう10月ですね。富士山が閉山してあっという間に1ヶ月が経とうとしています。
今回は、今シーズンの富士山巡視中に見た自然などの一部を紹介したいと思います。富士山の開山期間は2ヶ月ですが、天候や季節の移り変わりを感じる事が出来ます。

富士山の植物

7月の下旬に吉田ルートで見かけた植物です。富士山は植物が少ない印象があると思いますが、各登山口のある五合目付近から七合目付近の登山道には、砂礫の中にけなげに咲く植物がたくさんあります。疲れて足を止めたとき、元気や心の癒やしを与えてくれました。七合目周辺ではハクサンシャクナゲが見頃を迎えており、足下にはベニバナイチヤクソウの花も見られました。伊豆半島の真ん中にある天城山には固有種であるアマギシャクナゲがありますが、ここ数年の見頃は、5月頃です。同じ富士箱根伊豆国立公園ですが、標高の高い富士山とは見頃の時期がかなり違います。富士山のハクサンシャクナゲは花付もよく存在感がありました。

キバナノヤマオダマキ          (吉田口五合目周辺 7月下旬撮影)
クルマユリ
ムラサキモメンヅル               (吉田口五合目周辺 7月下旬撮影)
ハクサンシャクナゲ

御来光・朝日

富士山と言えば、一度は御来光を見てみたいと思う方が多いと思います。富士山から見る朝日は美しく、日が昇る前の空の色は特別です。皆さん御来光は山頂でしか見ることが出来ないと思っているかもしれませんが、そんなことないんです。今回は、須走ルート五合目と、山頂の御来光を紹介したいと思います。

須走ルートで巡視の準備を整えていると、空が明るくなり始め、日が昇り始めました。富士山の山体を赤く照らしとても美しかったです。これは山頂にいては見ることの出来ない特別な富士山です。しばらくするとあっという間に富士山の標高の高い部分を強く照らし、富士山の山体はいつもより薄い砂のような色に見え、雲の影で富士山に模様が出来ていました。

須走口五合目・六合目周辺(7月下旬撮影)

山小屋に宿泊し山頂付近から見る御来光は一期一会で、それぞれ特別な思い出になると思います。個人的には、御来光も美しいですが、日が昇る前の空の色が一番好きです。御来光前の山頂付近は、想像以上に寒いです。御来光は、太陽の光がこんなにも暖かいものなのかと感じる瞬間でもあります。

山頂付近からの御来光 (7月下旬撮影)

忘れてはいけない悪天候の富士山

巡視の計画をしていても、予報に反して悪天候の富士山の日に当たってしまうことがあります。この日は富士宮ルートに向かいましたが、予想以上の暴風雨で敢え無く巡視を断念しました。何枚か現地で写真を撮影しようとしましたが、レンズを拭いても拭いても凄まじい雨でこんな写真しか撮影出来ませんでした。悪天候の様子がよく分かると思います。富士山は雨や風をしのげる場所が少なく、快晴の天気でも体力をかなり使います。悪天候の登山はその何倍もの体力を奪い、危険を伴います。状況を見て判断し、安全登山をお願いします。 この日は少し五合目で作業した後、富士山スカイラインを下りましたが、水ヶ塚の駐車場では青空が見えており、沼津市内に戻ると晴天で富士山だけが悪天候でした。水ヶ塚駐車場付近から富士山を見上げると、五合目から八合目付近にバームクーヘンのような雲が覆っていましたので、見慣れない雲が富士山を覆っている場合は山麓の天気が良くても注意が必要です。

富士宮口五合目 8月下旬撮影

おまけ

吉田口五合目から富士山を見上げると山頂付近に大きな笠雲がかかっていました。笠雲は湿った空気の影響で大気の状態が不安定になっている時に発生するので、これから巡視に向かう時にはありがたい雲ではありません。この日の翌朝、山頂付近は晴天でしたが暴風でした。しばらくして風が落ち着きお鉢巡りをするとキレイな影富士を見ることが出来ました。

吉田口五合目 7月下旬撮影
富士山頂 7月下旬撮影

今シーズンの開山期間は終了しましたが、今年の夏もたくさんの富士山を発見できました。富士登山は長時間の登山になるので、時間毎に変化する天候や気温に左右されます。今後、富士山に登ってみたい!と思っている方は、秋から春にかけ登山するための体力作りや装備の準備を進めてみてはいかがでしょうか。