「山の日」御中道ハイキング
富士山日記第127号(執筆者 環境省 富士五湖管理官事務所 アクティブレンジャー 半田尚人)
富士山日記をご覧の皆さんこんにちは ! 富士箱根伊豆国立公園 富士五湖事務所アクティブ・レンジャーの半田です。
9月10日で富士山が閉山してから1ヶ月程経ち、富士山中腹の木々が幾分色づき始めた10月12日(土)に、「「山の日」御中道ハイキング」を開催しました。
毎年、「山に親しむ機会を得る中で恩恵に感謝する」という主旨で「山の日」に関連するイベントを富士五湖管理事務所でも開催しており、今年はオーバーツーリズム問題が叫ばれる中、敢えて「山頂を目指さない富士山の楽しみ方」をご紹介したく、秋の御中道・奥庭でのハイキングを企画しました。
ガイドは、「富士下山」など富士山の登頂以外の魅力を発信する、富士山ネイチャーツアーズ代表の岩崎仁氏が担い、参加者は県内のみならず、静岡県や東京方面など遠方からも応募頂き、総勢23名の参加者の皆さんが初秋の御中道を満喫されました。
今年は夏の猛暑や台風、秋の気温の高さが影響したのか、紅葉の始まりは富士山中腹でも遅く、私たちが訪れた時には、まだ葉がわずかに黄色く色づき始めたばかりで「秋真っ盛り」ではありませんでしたが、ガイドの岩崎さんの楽しい自然解説に耳を傾けながら、普段は見過ごしてしまう自然に目を向け、参加者の皆さんにとって、様々な発見のある一日になりました。
富士山で見掛ける様々な景観や植生は、火山特有な環境であり、火山群島で成り立つ伊豆諸島などと風景が似ている部分を持っています。また北アルプスの山々などと違って太古の氷河期を経験していないので、ハイマツなどは無くライチョウもいません。ハイマツの代わりに富士山ではカラマツがその地位にいます。山域によって目にする植物や景観の違いや類似点に注目すると、その地域の自然の成り立ちを学ぶことができます。
富士山というと、とかく「一生に一度の富士登山」とか「富士山は登るものじゃない、眺めるもの」などと言われ、山頂まで極めるか、全く足も踏み入れずに眺めて終わるかの二択のように思っている方も多いかも知れませんが、富士山の麓や中腹で自然を体感する、あるいは富士山を間近に眺めながら周辺の山をトレッキングするという、混雑する山頂を目指さない、別な富士山の楽しみ方もあるということを知って頂く良い機会になったかなと思います。
ご参加頂いたみなさま、ありがとうございました。
また、この記事を読んで御中道・御庭・奥庭に関心を持って頂いた方は、ぜひしっかりとした服装、足回りで散策を楽しんでみて下さい。
但し、一点注意があります。今年は富士山の初冠雪も遅く、本格的な冬の訪れも遅くなりそうな気配ではありますが、標高2,300m付近を歩く御中道は雪が降り、路面が凍結すると危険のため、状況を見て冬季閉鎖となります。(冬季閉鎖されたら、富士登山オフィシャルサイトでお知らせします)
必ず最新の情報をご確認の上、安全に注意するようにして下さい。
注) 吉田口五合目にある総合管理センターは10月31日をもって冬季閉館となり、富士山五合目自然解説員による無料ガイドは11月以降は行われていません。