2025.09.05

御来光だけじゃない!富士山で見える動植物-吉田ルート

富士山日記第130号(執筆者 環境省 富士箱根伊豆国立公園管理事務所 アクティブレンジャー 三浦雄大)

こんにちは!
富士箱根伊豆国立公園管理事務所の三浦雄大です。

富士山には溶岩が多く、『他の山のような動植物が全然見られない!』といった声を耳にすることがあります。
しかし、登山道の周囲に意識を向けてみると、意外にもたくさんの動植物であふれています。
そこで今回は、吉田ルートを巡視した際に見つけた生きものたちをご紹介します。

まずは、登山道入ってすぐの場所でひらひらと舞っていたアサギマダラです。
アサギマダラは、季節により渡りをする蝶として知られています。
秋から冬には暖かい場所を求めて九州や沖縄、さらに海を越え台湾まで旅に出るそうです。その力強さに驚きです。
また、浅葱(あさぎ)色(羽¹の少し透けた薄い青い色の部分の色をこう呼ぶのだそう!)の羽もきれいでとっても素敵ですよね。サイズは大きく見つけやすいのもポイントです。

  
▲登山道入り口のすぐ近くで発見!パワーをもらって登山開始です

しばらく歩を進め、六合目を過ぎたあたりで出会ったのはクジャクチョウ。
クジャクのような美しい模様に大きな目玉模様があるのが特徴です。本州では主に山地に生息していて比較的涼しい場所を好む蝶なのだそう!
遠目で見てみると大きな動物のように見えますね!しかし、羽の裏側はこげ茶色の1色でとても地味な見た目をしています。この対比があるからこそ、表の模様がより美しく見えるのかもしれませんね。

▲4つの大きな目玉がついているような模様!色鮮やかで美しいですね!

続いてはこちら!
ホタルブクロです。ピンク色でぷっくりとしているお花です。
下向きに咲いているのが何ともかわいらしいですよね。園芸にも人気のお花だそうで、もしかしたら育てたことがあるという方もいるのではないでしょうか?
私は初めて見たこの花ですが、夏の風情を感じられてお気に入りのお花になりました。

▲登山道の端で発見!風鈴や提灯の様にも見え、夏にぴったりですね!

続いて出会ったのはフジアザミ。富士山周辺地域でよく観察されることからこのような名前がついているのだそうです。
ご存じのように、富士山はスコリアと呼ばれる火山の噴出物の砂礫で覆われ、植物が生育するのにはとても厳しい環境です。そんな環境にいち早く定着できる植物を「パイオニア植物(先駆植物)」といいます。このパイオニア植物をたくさん観察できるのも、富士山の魅力のひとつです。

巡視の日にはまだ完全に咲いていなかったのですが、この状態でもトゲトゲの葉が存在感抜群です!

▲フジアザミ・きれいに咲くともっとダイナミックな姿に!
 フジアザミについて、こちらで詳しく紹介されていますので是非見てみてくださいね!

【参考】国土交通省 中部地方整備局 士砂防事務所

歩を進めていき7合目の手前まで来ると、鮮やかなムラサキモメンヅルが姿を現しました。こちらも標高の高い砂礫地に生育する、まさに富士山ならではの植物。
根が木綿のようになっていることからこの名前が付いたそう(諸説あり)。
紫色のきれいな花の周りにはマルハナバチも遊びに来ていましたよ!

▲鮮やかな紫色の花にはマルハナバチが!

このように富士山では、まだまだ紹介しきれないほどたくさんの動植物を見ることができます。
他の登山者の迷惑にならないよう、気を配りながら、富士山の自然を観察してみてください。きっと、新たな発見があるはずです。
また、厳しい環境下で健気に咲く花々や美しい昆虫は、登山で疲れた心を癒してくれますが、その姿は記憶だけに留めて、捕まえたり、引き抜いたりといった行為は行わないでください。
みんなで、この美しい自然を維持していきましょう!


1.「翅」は常用漢字ではないので、「羽」の字を使用しました。